チリを代表する冷涼気候栽培地へ進化を遂げたLiamri Valley。
シャルドネやソービニヨン・ブランは、IWCやDWWAなどの国際コンクールで受賞する世界レベルの品質で、プレミアムワインとしての地位を確立。
ピノ・ノワールやシラーも、そのあとに続いています。
Concha y Toroなどの大手ワイナリーが続々参入しているLiamri Valleyのテロワールを探ります。
基本データ
D.O.Limari Valleyは、チリ北部のCoquimbo州、Limari県にある、おおよそ南緯30°15′〜31°20′の低緯度に位置する渓谷に広がるワイン産地です。
北にアタカマ砂漠、東にアンデス山脈、西に太平洋沿岸を流れるフンボルト寒流があり、Limari川が中央を流れています。
Limari川以外にも、Hurtado川、Grande川の支流も流れています。そして数十の小さな谷や峡谷で、Limari Valleyを形成しています。
そのため渓谷は、Limari県のほぼ全域、南北に約80km、東西に約40kmの範囲の広大なエリアになっています。
渓谷一帯は、アタカマ砂漠の影響を大きく受けて、乾燥しているため、灌漑が欠かせない地域です。
なお、D.O.Limari Valleyは、以下の3エリアに分かれています。
- Costa(沿岸部)
- Entre Cordilleras(中央部)
- Andes(アンデス山脈斜面)
※ 以下、Costa、Entre Cordilleras、Andesで、表記します
気候、地形、土壌、主要な街について、補足します。
気候

Limari Valleyの気候は、おおきく、以下の通りです。
D.O.エリア | 温・冷 | 温度 | 備考 |
---|---|---|---|
Andes | 温暖 & 冷涼 | 昼25〜30℃、夜10℃以下 | アンデス山脈の影響大 |
Entre Cordilleras | 温暖 & ほどよく冷涼 | 昼25〜30℃、夜10〜15℃ | アンデス山脈の影響小 |
Costa | 冷涼 | 昼20〜25℃、夜10℃以下 | フンボルト寒流の影響 |
地形

Limari Valleyの地形は、山岳地帯、なだらかな丘陵地帯、低標高の丘陵地帯、と大きく3つに、わけることができます。
D.O.エリア | 標高 | 特徴 |
---|---|---|
Andes | 400~800m | 山岳 |
Entre Cordilleras | 200~500m | なだらかな丘陵 |
Costa | 100~300m | 低標高の丘陵 |
土壌

Limari Valleyの土壌は、石灰質土壌、砂質土壌、粘土質土壌、火山性土壌、花崗岩土壌、etc…と多様です。
おおまかに以下の通りです。
D.O.エリア | 土壌 |
---|---|
Andes | 火山性 |
Entre Cordilleras | 砂質、粘土質、石灰質 |
Costa | 石灰質、砂質 |
Costaは、チリでも数少ない石灰質が豊富な土壌です。
仏ブルゴーニュを彷彿させる、ミネラル感とシャープな酸をもつ、世界レベルのシャルドネを生む要因になっています。
主要な街

Limari Valleyにおける、主要な街は、以下のとおりです。
街 | 標高 | D.O. エリア |
---|---|---|
Rio Urtado | 1,300m | Andes |
Monte Patria | 1,200m | Andes |
Punitaqui | 369m | Entre Cordilleras |
Ovalle | 215m | Costa |
なお、Ovalleは、Limari県の県都です。
では、Limari Valleyのテロワールに、大きな影響をあたえている以下の要素を補足していきます。
- 南緯30〜31°
- アタカマ砂漠
- フンボルト寒流
- 途切れる海岸山脈
- アンデス山脈
南緯30〜31°

Limari Valleyは、南緯30〜31°の低緯度です。
そのため、日差しが強いです。
さらに乾燥した気候と相まって、昼は、気温があがります。
南緯30°のイメージがつきづらい人は、(北緯になりますが、)エジプトをイメージしてください。かなり赤道に近いことがわかります。
アタカマ砂漠

Limari Valleyの北側には、アタカマ砂漠が広がっています。
そのため、100〜200mmと非常に少ない低降水量で、乾燥したステップ気候となっています。
低降水量のため、Limari川をはじめとする河川からの点滴灌漑が必須です。
乾燥した気候は、昼は気温があがりやすく、夜は放射冷却で一気に冷える特徴があります。そのため、渓谷一帯は、日較差(=昼夜の寒暖差)が大きいです。
フンボルト寒流

Limari Valleyの西側にある太平洋には、フンボルト寒流がながれています。
フンボルト寒流は、非常につめたく、冷たい海霧と、冷たい海風を発生させます。
そして、主にCostaに、冷涼栽培気候を、もたらしています。
フンボルト寒流は、非常に冷たく、水温10〜15℃。
南緯30°という、亜熱帯地域であるにもかかわらず、真夏でも海水浴ができない水温です。
途切れる海岸山脈

Limari Valleyでは、チリ特有の海岸山脈が、途切れています。
そのため、西の太平洋を流れるフンボルト寒流が発生させる、冷たい海霧と、冷たい海風が、Costaの渓谷奥深くまで、入り込みます。
海岸山脈は、Limari Valleyの南に、一部存在しています。
Costaの南東の位置に、Entre Cordillerasがあります。Costaの東側は、すぐAndesで、隣接しています。
アンデス山脈

Limari Valleyの東側には、アンデス山脈がそびえています。
夜になると、アンデス山脈から、冷風「El Laco」が、吹きおろしてきます。
AndesやEntre Cordillerasで、大きな日較差(=昼夜の寒暖差)を生む要因の一つになっています。
まとめ

というわけで、チリを代表する冷涼気候栽培地へ進化を遂げたLiamri Valleyのテロワールを探ってきました。
シャルドネやソービニヨン・ブランは、IWCやDWWAなどの国際コンクールで受賞する世界レベルの品質で、プレミアムワインとしての地位を確立。
ピノ・ノワールやシラーも、そのあとに続いています。
Concha y Toroなどの大手ワイナリーが続々参入しているLiamri Valleyは、注目のエリアの一つです。
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